”ガロ系”という言葉があります。ある種の漫画の分類になど使われたりしますが、厳密な定義付けというのがされているわけではありません。広義には、今は亡き雑誌『ガロ』およびそれに類する雑誌群(『夜行』、『ばく』、『アックス』、『幻燈』等々)に掲載された作品もしくは作者による作品群といえます。狭義ではつげ義春を筆頭とするきわめて観念的な劇画作品群ともいえます(もちろん異論はあると思う)。
この狭義のガロ系漫画の特徴の一つに、きわめて商業主義とのソリが合わなかったという点がある。これが作者もしくは作品がそのような指向をしていたかというと、そういうわけではない。たまたま商業主義とはソリが合わなかっただけだと思われる(これにももちろん異論はあると思う)。
そんなわけで、大半のガロ系漫画家は、夭折したり、屈折したり、変節したり、筆を折ったりしてしまう。そんな中で菅野修は、残された数少ないガロ系の漫画家であり、いまだ孤高の際に踏みとどまる表現者でもある。
この本は、北冬書房から1986年に出版された。普及版が限定450部。この特装版は限定40部で、肉筆原画、識語署名入、背革ビロード装、題字金箔押しと、漫画としては最高峰の装丁を施した物である。
この本は、今や瀕死に堕した感のあるガロ系劇画が、かつて一瞬だけきらめいていた時代に打ち立てられた金字塔でもある。
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