○月×日 腐海(倉庫とも言う)で発掘作業(探し物とも言う)をしていると、今は亡き朝日ソノラマの『デュオ』(1981年創刊で85年に休刊)を見つける。1983年の7月号で、この号には宮田陽子の最後の(と推定されている)作品「シモーヌ」が掲載されている。扉のページには【復活・宮田陽子】というあおり文が書かれている。そうかここで復活したけど、またそのまま消えちゃったんだなぁ。 宮田陽子っていっても1977、8年頃に別冊少女コミックか週刊少女コミックを読んでいた人しか多分知らないと思う。何せ単行本が1冊も出なかった漫画家だから。 最初に読んだ作品は今ではもう覚えていないけど、なにかファンタジー風の作品だったような気がする。絵柄はデビュー直後から達者で萩尾望都辺りのアシスタントでもしていたんじゃないかと思わせるような、ファンタジー向きの柔らかで繊細な描線は当時非常に印象に残っていた。 その後別冊少女コミックや週刊少女コミックで発表された作品は、学校が舞台のスラップスティックコメディと学園や異国(国籍不明)ラブロマンスがとかが多かった。ちょっと構成力に難があったけど、基本的には絵が上手く、選ぶ題材もそれなりに時代に即していた…と思っていたのだけれども、あるときふと気がつくと作品を見かけなくなっていた。70年代以前の女性漫画家が漫画家辞めちゃう筆頭理由の結婚でもしたんだろうなぁと、そんな風に思っていた。
気になりついでに折角だから読み直してみようかと腐海(倉庫だよ)を漁ってみた。出てくる出てくる!
デビュー前の新人賞投稿作が載った別冊少女コミック1977年5月増刊号までちゃんと出てきた。さすが我が腐海(倉庫だってば)だ!
そんなわけで今回発掘されたのが28作品。これで全部だと言い切るほどの自信はないが、9割方は網羅できたんではないだろうか。折角なので閑にあかせて(閑があるなら店の棚整理しろよ)、作品リスト作ってみました。 1976年 マリーへの調べ(デビュー作)
別冊少女コミック9月号 Gクラスが行く! 別冊少女コミック11月号 夢いっぱい白雪姫 週刊少女コミック11月14/21日号(47/48号) 1977年 給食のお雑煮に涙がおちた
別冊少女コミック1月号 ひな祭りの詩 別冊少女コミック3月号 エミリの青空 別冊少女コミック5月号 デイジー・ドリーピア(1976年第10回別コミ新人賞佳作作品)別冊少女コミック5月増刊号
星のとびかう日び 別冊少女コミック7月号 花とちくわと箱根の山と 別冊少女コミック8月増刊号 光る館 週刊少女コミック9月4日(37号)
16歳のおめでた 別冊少女コミック10月号 おかあさんの森 週刊少女コミック10月9日(42号) 赤点はダメよ 週刊少女コミック11月13日(47号)
常盤樹 週刊少女コミック12月11日(51号) 1978年 おばあさんの暖炉 週刊少女コミック1月15日(3号) 雪割草の歌
週刊少女コミック2月12日(8号) 光の竪琴 週刊少女コミック3月12日(12号) ぼけの花学園へようこそ 週刊少女コミック4月16日(17号)
ブー・ブー・ブー 週刊少女コミック5月3日増刊号 愛のUFOカップやきそば 週刊少女コミック6月11日(25号) 風と光のジャン
週刊少女コミック8月13/20日(34/35号) 夕日の中で 週刊少女コミック11月25日増刊号 恋はみじめにあっけなく 週刊少女コミック12月25日増刊号コロネット 薔薇の奇蹟!! JUN12月号 1979年 私たちのレオナル! 週刊少女コミック2月29日増刊号コロネット おあずけキッス 週刊少女コミック4月28日増刊デラックス号
蝙蝠城のエドムおじさん 週刊少女コミック8月28日増刊デラックス号 1980年 ネコとひなぎく共和国 週刊少女コミック3月29日増刊号 1982年
バラ色の髪の少女 ニュー・ファンタジー・コミックの世界(10月25日発行) 1983年 シモーヌ デュオ7月号
宮田陽子の経歴は今まで全然把握していなかったが、投稿作「デイジー・ドリーピア」掲載の別冊少女コミック1977年5月増刊号を読んでいたら、若干の略歴が判明した。出身は福島県でデビューは21歳頃、中学から投稿していたが高校の頃に母親の病気で学校を中退し家事を肩代わりしていたと言うことだから、だれかのアシスタントをしていたわけではなさそうだ。
作ったリストを見ていると79年以降ほとんど作品がない。病気でもしていたのか単に仕事がなくなっていたのかは良く分からない。1977年の少女コミックグランプリを受賞しているのだから、編集部辺りでもそれなりの期待値はあっただろうに。同じ小学館ならばプチフラワーにでも移籍していたら、それなりの作品を描く機会もあったのでは、と思うとちょっと惜しい才能だった気もする。
前掲したDUO掲載の「シモーヌ」をよく見たら欄外に”妹が姉の私を差し置いて見合いをした。なぜ私のところには見合い話が来ないのだ」(注:意訳してます)てな事が書かれていた。少なくても結婚で漫画家を辞めたわけではなさそうだ。 ♂月♀日 古書市場で仕入れた漫画の束に汐見朝子『ベッドの鉄人』(宙出版:エメラルドコミック)が3冊ほど混ざっていた。どうも汐見朝子というと1970年代前半のりぼん誌における”下町の貧乏な少女が不幸にもにもめげず点点点”という「7さつぶんの幸せ」とか「幸せ通り10番地」あたりのイメージ(好きなんですけどね)が脳内に濃厚にインプリンティングされているので、「ベッドの鉄人」のようなヌトヌトのグチョグチョの作風(大好きなんですけどね)を見ると、そのあまりの作風のギャップに頭がクラクラしちゃう。
『ベッドの鉄人』という作品は、そのタイトルから推察されるようにSEXの達人が性の問題でお困りの方々をSEXテクニックでもってカウンセリングするという1話完結形式の作品である。掲載は多分、宙出版の『AYA』というレディースコミック雑誌で途中から『スペシャルAYA』移行したようだ。最初の単行本が1999年の出版で、昨年でた『スペシャルAYA
2009年4月号』(これ以降刊行が停止している)にも掲載されていたので、途中休筆がなければなければ10年以上連載が続いていた筈だ。
単行本に関しては、1999年から2001年にかけて最低8冊は出ていたようだ。なぜ出ていたようだなどと、曖昧な書き方をするかと言えば、アマゾン辺りのサイトで調べても刊行データがハッキリしない点があるからだ。なぜハッキリしないかといえば、この単行本には通巻表記が無く各巻にサブタイトルが付けられているだけで、しかも単行本の刊行が雑誌掲載順ではなくて、テーマ(性的嗜好?)毎に再編集されている。一応8冊のサブタイトルを挙げてみる。 <悶絶!!人妻の巻> <悦楽の初体験の巻> <喜悦に溺れる未亡人の巻> <不感症なんてない!の巻> <禁断のSM調教の巻> <
セックスレスなんて怖くないの巻> <バイブが気持ちいいの巻> <ああ絶頂へ…イキたいの巻 > サブタイトルだけでもナカナカそそるでしょ(笑)。内容はネトネトグチョグチョで”SM調教”的なネタがあっても、なぜか作風はライトで陰湿な感じがしないのも長続きした理由じゃないのだろうか。作品としても結構面白いので、見付ければ集めるようにしているのだが、それほど売れなかったのかあまり古書市場でも見かけない。昔の少女漫画家がレディスとはいえ今でも活躍しているのを見るとちょっと嬉しい。でも最終ページに大ゴマ使ってバイブレーターが”デン!”とデッカク描かれているのを見るとやっぱりちょっと萎えちゃう。 △月☆日
漫画読みとしてはもう老頭児(ロートル)なんで、最近は『花とゆめ』とか『りぼん』はおろか、少年マンガ誌すら読めなくなっちゃって、自分で購入する新刊雑誌はもっぱら『ビッグコミック』か『ビッグコミック・オリジナル』とそれらの増刊号くらいしかない。半年ほど前から『ビッグコミック・オリジナル増刊号』で、ちょっとお気に入りの作品が毎回掲載されている。野村知沙「看護助手のナナちゃん」という作品だ。作者の野村知沙は、近年『イブニング』誌でヒットした「とろける鉄工所」の野村宗弘の奥さんだそうだ。 「看護助手のナナちゃん」という作品は、自身が看護助手をしていた時代の体験を元に描いているそうである。ものすごく単純な絵柄なのに、主人公のナナちゃんの明るくひたむきな性格が絵柄からにじみ出てくる。なんだかマンガという表現手法って凄いなと思わせる作品である。
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